水族館についてのあれこれ（三）
台所（エサの仕込）
たくさんの生き物を飼育している水族館では、好みのエサの種類も様々でしょうし、同じエサでも口の大きさや食べ方に合せた作り方をしなければならない等、エサの仕込みや与え方には苦心と工夫が求められます。
「アクアワールド・大洗」のアザラシのいる５階から６階への階段の昇り口の隅に、「アクアワールドの台所」という解説があります。
まず、エサをつくるときに気を付けている点として、次の７点が記載されてあります。
- ・ エサは人が食べても害のない、新鮮なものを選ぶ
- ・ 栄養がかたよらないように、たくさんの種類のエサをつくる
- ・ 脂肪分の多い魚や、皮のかたい魚は使わないようにする
- ・ 生き物の口の大きさや、食べ方に合せたエサをつくる
- ・ つくったエサはなるべくすぐに与え、栄養分の流出を防ぐ
- ・ エサを与えるまでに時間があるときは、冷蔵庫に保管する
- ・ 庖丁や流し台などは清潔にして、雑菌の繁殖を防ぐ
同じエサでも、生き物の口の大きさや食べ方に合せた作り方をする一例として、「アジの調餌例」の解説があります。
- 丸のまま ： 大型海水魚（イルカ、シロワニ等）
- ブツ切り ： 中型海水魚（サメ、タイ等）
- 三枚おろし ： 中型海水魚（シマアジ、ヒラメ等）
- 短冊切り ： 小・中型海水魚（カサゴ、カレイ等）
- さいの目 ： 切り小型魚（フグ、シロギス等）
好みのエサの種類についても、「いろいろなエサとそれを食べる生き物たち」として、次のように説明されてありました。
| エサの種類 | 生き物 | エサの種類 | 生き物 | ホッケ | ゴマフアザラシ | ナンキョクオキアミ | メバル等中型魚 | 小アジ | ペンギン | イカのさいの目切り | カワハギ等の小・中型魚 | サバ | イルカ、アシカ等 | アカムシ | イトヨ等の淡水魚 | ホッキガイ、 ホタテガイ | ラッコ | ハマグリ | マダラトビエイ | カタクチイワシ | マグロ等大型魚 | プランクトン | クラゲ、シラウオ |
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水質の管理
水族館の飼育員は毎日欠かさずに、飼育水槽を巡回し、お魚などの様子を観察し、健康状態をチェックしています。お魚たちの健康に関連する基本要素は、水（水質、水温）、餌、水槽内の同居者（生物）です。
水族館で飼育し、展示している「水生生物」にとって一番大切なのは「水（海水）」の状態です。水生生物は、呼吸器官（鰓など）で海水中に溶け込んでいる酸素を取り入れ、同時に二酸化炭素を海水中に吐き出しています。海水中に溶け込んでいる酸素の量（溶存酸素量）は水生生物が生命を維持するうえで非常に重要なファクターです。また、水生生物の排泄物や食べ残した餌から溶出するアンモニアは毒性が強く、水中に蓄積して悪影響を与えます。
常に新鮮な海水を取水して補給し、かつ捨てることができる場合には、（水温が高いと溶存酸素量が減るので）温度管理を適切に行えば溶存酸素量の点は心配いりませんが、アンモニア濃度は飼育水の浄化が必要になり、この点が水族館における飼育技術上の最も需要な関心事となります。
バックヤード
水族館の展示スペースは、大きくてきれいな水槽の中をお魚たちが自由自在に泳ぎ、見ているだけで癒される空間です。これを維持する秘密が、水槽の向こう側にある「来館者立ち入り禁止」のバックヤードにあります。
水槽を泳ぐお魚たちの姿や、イルカたちのショーが水族館の表の姿とするならば、それを支えるバックヤードの施設・設備とこれを操作するスタッフたちの努力や苦労は、いわば裏の姿といったところでしょう。見学者からは見えないところで水族館のスタッフは絶えまぬ努力を続け、水族館を支えているのです。
水族館のスタッフにとって、沢山いるお魚たちの食事を用意するのもその仕事です。生き物によって食べる餌や量、食事回数は千差万別です。例えば、ラッコはホタテガイ、ホッキガイ、甘エビなど美食なうえ、食べる量もかなりのものです。一方、マンボウは消化不良を起こしやすいのでミンチ状にして与えなければならないなど、それぞれに工夫が必要です。
餌をちゃんと食べたか、体に傷はないかなど体調管理も重要です。病気の場合は治療が必要ですし、他の生き物に感染しないような対策も講じなければいけません。
また、水族館の魅力の一つである海獣ショーのために様々な芸を覚えさせることもスタッフの大切な仕事です。信頼関係を築き、地道な訓練を日々重ねています。デビューまでには３〜４年の訓練が必要です。アシカがイルカの背に乗ってプールを回遊するショーのような高度なものは、もっとかかりますし、相性の見極めの問題もあります。
生き物たちの飼育だけでなく、水槽や飼育水の管理も忘れてはいけません。水槽の掃除や水温のチェックなど、生き物たちが暮らしやすく、また来館者が観察しやすい状態を維持します。
水槽の後ろや地下には、汲み上げた海水や淡水を濾過する装置や、飼育水を温めたり冷やしたりする水温調節の機械、電気設備や停電時の発電装置、水槽に酸素を送るブロアー設備など、様々な機械が数多く設置されています。そして、これら機械の間を網の目のようにパイプが走り、まるで工場のような雰囲気です。おそらく水族館の総面積の半分近くは、私たちが目にすることのない部分と言えるでしょう。
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「バックヤードツアー」と言って、機械室のような普段見ることのない舞台裏を、一般公開している水族館があります。「アクアワールド・大洗」では「水族館探検ツァー」といっています。
「アクワワールド・大洗」はサメを世界中から集めていてその種類数では日本一です。そしてサメの繁殖にも力を入れていて、日本で最初に成功したケースも幾例かあります。そのサメの卵や展示前の赤ちゃんを見せてもらえたりもします。
その他、通常では見学できないような場所から水槽を眺めたり、どのように飼育しているかを教えてくれたり、来館者はいろいろと新たな視点で水族館を楽しむことができます。