水族館についてのあれこれ（二）
お魚たちを集める
アクアワールド・大洗で飼育している生物は全部で６４８種で、このうち展示しているのは約５８０種で６８，０００点ですが、こんなに多くの種類のお魚たちをどうやって集めたのでしょうか？
収集ルートとしては、
- ①専門業者（活魚業者・海洋生物販売商・フィッシュサプライヤー）から購入する、
- ②漁業者から購入する、寄贈を受ける、
- ③水族館職員が野外に出て採集する（自家採集）、
- ④水族館の中で繁殖する（自家繁殖）、
- ⑤他の水族館と交換し合う、
「アクアワールド・大洗」の平成２６年度の実績では、①が最も多く、次いで②、③といった順でした。（平成２６年度年報）
ここでちょっと「会瀬の定置網」について触れてみたいと思います。日立市のほぼ中央に会瀬漁港がありますが、その沖合１．６海里に定置網が設置されています。
親潮と黒潮がぶつかり豊かな漁場となっている常磐沖には、以前は、福島、北茨城、日立、ひたちなかなどで定置網が設置されていましたが、いま残っているのは会瀬の１統のみになってしまいました。茨城県で唯一というだけでなく、仙台湾以南から九十九里までみてもここにしか無いという貴重なものです。
漁は一年中行われていますが、春と秋が最も活気づき、春は特にマダイが、そして通年ではアジやサバ、ブリ、マグロ、スズキなど様々な魚が獲れるようです。
この会瀬の定置網に漁業の対象ではないサメ、マンボウ等の魚が入り込むことがありますので、それを譲り受けるものです。（平成２６年度年報では５５種６５９点）
海水の取水
水族館では、お魚達が元気で過ごせるように、常に新鮮な海水をたくさん取水し、入れ替えて使います。ですから全国の水族館のほとんどは、海水を取り入れやすい海辺に造られています。
「アクアワールド・大洗」で使う海水は、海岸から６００ｍ沖（水深１０ｍ）にある取水口から取り入れています。一旦着水漕にためてごみや砂を取り除いた後、水族館に送ります。１日に約２２００トンの海水を使っています。また、取水口の真上には黄色いブイがあり、漁の網が引っ掛からないよう、目印にしています。
水槽について
「アクアワールド・大洗」には、最も大きい「出会いの海の大水槽」（１，２６０トン）をはじめとする７０の展示用水槽があり、その総水量は４，１６３トンとなっています。
「出会いの海」の大水槽前で「アクアウォッチング」（水中カメラを持ったダイバーが大水槽の中のお魚や亀などの生物の紹介をしてくれるショータイムのことです。）を見学していた時に、ガイドのお嬢さんが大水槽のガラスの厚さを「５５ｃｍ」と説明していました。
あれだけの大量の水だから相当の水圧だろう、それを支えているのだからそんなものかなぁと納得して聞いていましたが、本当は凄いことなのではないか？としばらくしてから気付きました。
水族館の水槽は、大きく「展示水槽」と「予備水槽」に分類できます。普通に目にするのは「展示水槽」で、これはお魚たち水生生物を収容して水族館来館者の鑑賞・観察に供するためのものです。この他にお客さんが立ち入れない裏側（バックヤード）にたくさんの水槽があります（総容量は９５１トン）。
以前、「展示水槽」に使われていたのは「強化ガラス」でした。強化ガラスは板ガラス（鉱物ガラス）の表面を圧縮して強化したものなのでそれ以上の加工は難しいため、水槽の形やサイズには限界がありました。また、強化されたといっても一般的な板ガラスの３～５倍程度なので、大きな水圧に耐えられる強度とするには何枚も重ねたり、幅の広い水槽ではガラスとガラスの間を金属製の柱でつないだりする必要があり、見やすさという点からも完璧ではありませんでした。
この欠点を克服したのがアクリル樹脂でできた「アクリルガラス」です。透明度が高く、強化ガラスよりも耐久性に優れているうえに、加工性が高くガラス同士の接着が可能なので、金属柱を入れずに一枚の大きなパネルを作ったり、曲げたりカーブを付けることもできます。
アクリルガラスの使用により、大きな水圧がかかる巨大水槽でも安全が確保され、柱による継ぎ目がなく、海の中にいるような感覚を水族館で体感できるようになりました。円柱型水槽やアーチ状のトンネル水槽なども作ることができるようになりました。
「アクアワールド・大洗」で一番大きな水槽は、「出会いの海」の大水槽で容量は１，３００トンあります。水槽に向かって右隅にこのアクリルガラスの実物と説明があります。
それによれば、ガラス１枚は幅１５ｍ、高さが８ｍ、厚さが５５ｃｍで、これを５枚張り合わせてつくられているのです。よーく見ますと、張り合わせた部分が１本の細い黒い線になっています。
また、厚さ５５ｃｍというのは、厚さ４．５ｃｍのアクリルガラスを１１枚接着してできているそうです。実物によりその厚さを実感できます。
さて、ここでバックヤードにある「予備水槽」に注目したいと思います。言葉からすると、メインの「展示水槽」に対する「予備」ということになるのでしょう。
展示水槽を掃除するときや展示生物を入れ替えるときに一時的に入れておく水槽、新ししく入れる生物が病気にかかっていないか確かめたり、餌付けをして水槽での飼育に慣れさせるために一定期間入れておく水槽、水槽に展示中に怪我した生物を治療するための水槽などが、予備水槽として必要です。
ですから、単なる「予備」ではなく、重要かつ必須の役割を果たしている水槽なのです。表に出ていないというだけの「予備」なのです。
「水族館探検ツァー」に参加できると、普段見ることのできない水族館の裏側を案内してもらえます。当然、その際にはいろいろな予備水槽も見ることができます。
また、６階のラッコの水槽へと昇る階段のところから、ガラス越しにバックヤードの一部を見ることができるようになっていて、「世界のサメ水槽」、「ばっき（曝気）水槽」などと表示された予備水槽を見ることができます。